独創的な香りの世界観で知られるパリのフレグランスメゾン、ディプティック。その中でも「黒ボトル」として親しまれるオードパルファンは、オードトワレとは異なる濃密な深みと持続性が特徴のラインアップです。
本記事では、現在(2026年3月現在)展開されているオードパルファン全12種類の特性を、香りの系統ごとに整理して解説します。それぞれの香りが持つ背景や調香の魅力を知ることで、ご自身に合う一品を見つけるきっかけとなれば幸いです。
ディプティックの「オードトワレ」のラインはこちらで紹介しております。
フローラル・シプレ系のラインアップ
ディプティックのオードパルファンの中でも、花の香りを主役にしたフローラル系と、都会的で洗練されたシプレ系は、花の芳しさや都会的な洗練を求める方に選ばれることの多いラインアップです。ここでは、黒ボトルとして展開されている4つの香りをご紹介します。
ド ソン(DO SON):テュベローズの官能的な調べ
創業者のひとりが子供時代に過ごした、ベトナムのハロン湾にあるドソンの海辺の記憶から誕生した香りです。オードパルファンでは、主役であるテュベローズの香りがより濃密に表現されており、オレンジの葉やローズベリー、ムスクが重なり合います。海風に運ばれてくるような、瑞々しくも官能的な花の香りが長時間持続するのが特徴です。
オー ローズ(EAU ROSE):ダマスクローズとセンティフォリアローズ
2種類の希少なバラ、ダマスクローズとセンティフォリアローズを贅沢に使用した香りです。オードトワレが朝摘みのバラのような軽やかさを持つのに対し、オードパルファンはバラの「エキス」を抽出したような深みがあります。アーティチョークの意外なアクセントや、カモミールの落ち着いたニュアンスが加わり、甘すぎない高貴なバラの表情を楽しめます。
フルール ドゥ ポー(FLEUR DE PEU):アイリスとムスクによる肌の香り
「肌に咲く花」を意味するこの香りは、古代ギリシャ神話のプシュケとエロスの愛の物語にインスパイアされています。アイリスのパウダリーな質感と、アンブレットシードによるムスクのような温かみが肌の上で溶け合います。柔らかく肌に寄り添うムスクの余韻が、まとう人の個性を静かに引き立ててくれる香りです。
オー キャピタル(EAU CAPITALE):パリへのオマージュを捧げるシプレ
ディプティックの故郷であるパリへの敬意を表して作られた、ブランド初となるシプレ系の香りです。溢れんばかりのローズのブーケに、パチュリの深みとピンクペッパーのスパイスが効いています。自由でエレガントなパリの空気感を体現しており、クラシックでありながら現代的な洗練さを感じさせる構成となっています。
ウッディ系のラインアップ
木々や樹液、森の空気感を表現したウッディ系は、ディプティックの歴史において欠かせないカテゴリーです。オードパルファンでは、素材の質感がより際立ち、落ち着きのある深い余韻を楽しむことができます。
フィロシコス(PHILOSYKOS):イチジクの木全体を表現した香り
ギリシャのペリオン山での夏の情景から着想を得た、ブランドを代表する香りの一つです。オードパルファンでは、イチジクの葉の瑞々しさに加え、樹皮や樹液のウッディな厚みが強調されています。ホワイトシダーの温もりが重なり、まるで太陽に照らされたイチジクの木陰にいるような、多面的な構成が魅力です。
タム ダオ(TAM DAO):サンダルウッドが導く聖なる森
創業者がベトナムの山々で過ごした日々にインスパイアされた、サンダルウッド(白檀)を主役とした香りです。オードパルファンは、希少なマイソール産サンダルウッドの濃度が高められており、サイプレスやマートルの清涼感とともに、寺院の静寂を思わせるクリーミーで神聖な木の香りが肌の上に長く留まります。
ヴェチヴェリオ(VETIVERIO):ヴェチヴァー、グレープフルーツ、ローズ
ハイチ産のヴェチヴァーを中心に据えつつ、ディプティックらしい意外性を加えた香りです。オードパルファンでは、ヴェチヴァーの土っぽさやスモーキーな側面を、グレープフルーツの苦味とローズの華やかさが絶妙に引き立てます。力強さと繊細さが共存する、洗練されたウッディノートを堪能できる一品です。
テンポ(TEMPO):3種類のパチュリ、バイオレットリーフ
1960年代の自由な空気感を、パチュリをテーマに再解釈した香りです。3種類の異なる抽出方法によるパチュリをブレンドしており、土のニュアンス、ウッディな深み、そしてどこかフローラルな甘みが交差します。バイオレットリーフの青みが加わることで、パチュリの持つ野性味と洗練さがバランスよく表現されています。
オリエンタル・フゼア・その他のラインアップ
ディプティックのオードパルファンには、伝統的な香調を独自の感性で再解釈した、個性的で物語性に富んだ香りが揃っています。伝説のジャズクラブの再現や、神話にインスパイアされた4つの香りをご紹介します。
オルフェオン(ORPHEON):伝説のジャズクラブの熱気を再現した香り
ブランド創立60周年を記念して誕生した、1960年代初頭のパリ・サン=ジェルマン大通りにあったジャスクラブ「オルフェオン」へのオマージュです。オードパルファン特有の濃密さが、タバコの煙やくゆらすお酒、磨き上げられた木製のカウンターといった当時の活気ある空間を見事に描き出しています。ジュニパーベリーの清涼感とジャスミンの華やかさ、パウダリーな温もりが混ざり合う、多面的な魅力を持つ香りです。
オー デュエル(EAU DUELLE):バニラの旅を巡る物語
バニラという素材が持つ、甘さだけでないスパイシーでドライな側面を引き出した香りです。オードパルファンでは、ブルボンバニラの濃厚なエッセンスに、ブラックティーやピンクペッパー、カルダモンのスパイスがより深く溶け込んでいます。
まるで見知らぬ土地を旅するような、ミステリアスで高貴なオリエンタルノートを堪能できます。
ヴォリュート(VOLUTES):旅の記憶を呼び覚ますタバコとハニー
1930年、サイゴンへ向かう大型客船の上で、少年時代のイヴ・クエロンが記憶に刻んだ、タバコの煙とおしろいの香りから生まれた香りです。蜂蜜のような甘みのあるタバコの花(ニコチアナ)の香りに、ドライフルーツやスパイス、アイリスのパウダリーさが重なります。
オードパルファンならではの持続性が、旅の郷愁を感じさせる温かく官能的な余韻を長く肌に残します。
オード ミンテ(EAU DE MINTHE):ミントが奏でる現代的なフージェ
ギリシャ神話のミンテ(メンテ)にインスパイアされた、伝統的な「フゼア」という香調を現代的にアレンジした一品です。ペパーミントの爽快感に、ゼラニウムのフローラルな側面と、パチュリの深みが加わっています。
清潔感がありながらも、オードパルファンらしい落ち着きと気品を感じさせる、洗練されたアロマティックな構成が特徴です。
まとめ
ディプティックのオードパルファン(黒ボトル)全12種類は、それぞれが独自の物語を持ち、オードトワレとは一線を画す濃密な香りの世界を形作っています。素材の深みを引き出した調香や、長時間続く心地よい余韻は、日常に芸術的な彩りを与えてくれるはずです。
本記事を通じて、それぞれの香りが持つ背景や個性を整理した内容が、ディプティックの魅力を改めて知るきっかけとなれば幸いです。